長崎のキリスト教を知るための入門書20冊と長崎を知るための入門書20冊
日本のキリスト教史を考えるうえで長崎を避けて通ることはできない。
というわけで、ながさきのキリスト教、そして長崎をしるための小説、本等をそれぞれ約20冊
上げてみた。一部未読を含む。
これだけ読めば、長崎初級ぐらいにはなれる、と思う、たぶん・・・。
①『日本の教会をたずねて(別冊太陽) 八木谷涼子
キリスト教界の鬼才八木谷涼子さんが取材した日本の教会のムック。特に長崎市周辺、五島列島のカトリック教会も美しい写真入で紹介されていて読んでるだけでしゃーわせ。
なお長崎の教会群は世界遺産申請をおこなっているので、もしかしたらもしかするかもしれない。そしたらぜひ復刊してほしい・・・。
② 同2
③「浦上四番崩れ 明治政府のキリシタン弾圧」 片岡弥吉 ちくま文庫
片岡弥吉(1908~1980)は長崎出身でカトリックの純心大学教授として、長崎の歴史、特にキリシタン研究で知られ、著作は多数。長崎のキリスト教を知るならまずはここらから。
⑤「ある明治の福祉像 ド・ロ神父の生涯」片岡弥吉 NHK出版
ド・ロ神父はフランス出身。長崎市内や外海地方などで、明治期の福祉創世期に大きな足跡を残した。
⑥「カクレキリシタンの実像 日本人のキリスト教理解と受容」 宮崎賢太郎 吉川弘文館
宮崎(1950~)は純心大学教授。現存する中ではカクレキリシタン研究者の第一人者といっていいと思う。
⑦「沈黙』 遠藤周作 新潮社
キリシタン弾圧を描いた、いわずとしれた名著。遠藤はこの作品でノーベル文学賞候補になったが、そのキリスト教解釈の独自性ゆえに西洋人から評価されず受賞を逃がしたという説もある。「この国は沼地だ。(中略)どんな苗もその沼地に植えられれば、根が腐りはじめる」
はあまりにも有名。
明治維新後のプチジャン神父による再布教、浦上信徒の再発見の次代を背景にした時代小説。沈黙ほど有名ではないが、名作
⑨「聖水」 青来有一
2001年芥川賞受賞作品。長崎を舞台に作品を書き続ける青来は、長崎市の職員でもある。2005年に市平和推進室長に就任。
⑩「爆心」 青来有一
同上。2007年伊藤整文学賞、谷崎潤一郎賞受賞。青来がキリスト教徒であるかは私は知らないのだがその作品には色濃く、キリスト教が根強く土着した長崎の風土を匂わせている。
⑪「この子を残して」 永井隆 アルバ文庫
原爆で被爆し、長崎大学医学部医師として被爆者救護活動に関わったカトリック信徒の永井隆の著作。映画化、歌にもなりある程度以上の年配の方でその名を知らない人はいない。同時に彼の原爆のキリスト教的解釈は「浦上燔祭説』としてその後現在に至るまで長崎を根強く支配することになった。浦上燔祭論については、以前書いたこのあたり参照
⑫「長崎の鐘」 永井隆 アルバ文庫
⑬長崎原爆論集 山田かん 本多企画
荒野の聖人とされ、戦後長崎において永井隆批判はながらくタブーだった。はじめてその先鞭をつけたのが諫早在住の詩人山田かん(1930~2003)だった。1972年に発表した「招かざる代弁者 永井隆」を納めた論集。
そうえいば2011に出た「コレクション 戦争×文学 ヒロシマ・ナガサキ」にも山田かんの「浦上へ」が収録されていて驚いた。
⑭「長崎にあって哲学する」 高橋眞司 北樹出版
長崎大学文学部教授として哲学者の側から、永井隆の思想を「浦上燔祭説」と名づけ、批判したのが高橋真司である。長崎に住んでキリスト教を考える上で避けては通れない一冊。本書によると高橋自身もキリスト教徒のようだ。
⑮「続・長崎にあって哲学する」 同
⑯渡辺千尋(1944~2009)は、長崎出身の版画家・ノンフィクション作家。本作は2001年の小学館ノンフィクション賞優秀賞受賞。1597年に有家で制作された銅版画に隠された二十六聖人殉教との関わりの謎を解き明かす。著者はそのために京都から長崎西坂まで800キロの殉教者の道を実際に歩き、復刻を目指した。大変な力作
⑯「ゆるす思想(こころ)ゆるさぬ思想(こころ) 若い世代と語る平和・原爆・いま・未来」
本島仁 こうち書房 (未読)
昭和天皇の戦争責任発言をし、1990年に右翼から銃撃された元長崎市長の著作。本島はカクレキリシタンの子孫で、カトリック信徒でもある。なお、本島の後任の伊藤一長市長は、2007年に銃撃され死亡した。2代続けて首長が銃撃された事件は世界でも他にあるのだろうか・・・。
ゆるす思想(こころ) ゆるさぬ思想(こころ)―若い世代と語る平和・原爆・いま・未来
- 作者: 本島等,山口仙二
- 出版社/メーカー: こうち書房
- 発売日: 1992/07
- メディア: 単行本
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⑰「日本二十六聖人殉教記」 ルイス・フロイス 聖母文庫 (未読)
長崎駅から徒歩5分の岡の上にあるのが二十六聖人殉教地。豊臣秀吉によって、京都から800キロを引き回されここで処刑された。
1549年に鹿児島に渡来したイエズス会士フランシスコ・ザビエルは1550年から平戸に入り宣教活動を行った。
聖フランシスコ・デ・サビエル書翰抄 上巻 (岩波文庫 青 818-1)
- 作者: フランシスコ・ザビエル,ペトロ・アルーペ,井上郁二
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1991/11
- メディア: 文庫
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(2)長崎を知るための入門書
越中哲也(1921~)は、長崎の郷土史家の第一人者。長崎ぶらぶら節の古賀十二郎の孫弟子にあたる。テレビの長崎くんちや精霊流しになると必ず解説者で呼ばれる。
彼の名前を知らない長崎人はもぐりといっていい(笑)
目で見る長崎市の100年 (目で見る長崎県の100年シリーズ)
- 作者: 越中哲也,岡林隆敏
- 出版社/メーカー: 郷土出版社(名古屋)
- 発売日: 2002/07
- メディア: 大型本
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②「長崎乱楽坂」 吉田修一
吉田修一は長崎県出身。昭和の市内の地方侠客の家の没落を淡々と描いた、日本版アッシャー家の崩壊、長崎の鬼龍院華子の一生、とでもいうべき大傑作。
映画化されないかすら
長崎から上京し、東京の大学に入学した男の子の青春小説。個人的には21世紀最高の、平成の三四郎とでもいうべき大傑作。大村に上陸したボートピープルのベトナム人のエピソードなど、昭和の長崎の青春を感じさせる。
「世之助は長崎を舞台にした映画を何本も見てきた。でもそのたびに、それは現実とはどこか違っているように思える」
④「悪人」 吉田修一
映画化もされた朝日新聞掲載の新聞小説。平成の「冷血」とでもいうべき傑作。現代の地方都市(長崎)に住む若者(映画はツマブキ君)のどこにもいけない閉塞感が超リアル。映画も、深津エリ、きききりん、江本明、満島ひかる、と演技派が脇を固めていてすごいよかった。
④「紫の履歴書」 三輪明宏
三輪は、長崎の歓楽地、思案橋の丸山の遊郭の置屋の息子。そして載ってる少年時代の写真は、男が見てもぞっとするほどの美青年。恋人の三島由紀夫に「聖なる怪物」と称された彼の原点がここにある。
長崎港にあった三菱造船所で、船中秘かに作られていた戦艦武蔵の建造の時代を、膨大な史料を元におった力作。長崎は戦中、日本で最も重要な軍事都市だったという過去もある。
⑥「軍艦島」
大正時代、炭鉱の島として開発され1974年の閉山まで栄えた島、端島通称軍艦島。最近は、10年ほど前までは渡航は禁止されていて、釣船ぐらいでしかいくことはできなかったが、最近は観光名所と整備され上陸も可能となった。写真集も多数出ているが、往時の姿を偲ぶことができるこの写真集がおススメ。
⑦「遠い町並みの日々」 カズオ・イシグロ
現代英米文学を代表する作家、いまやノーベル文学賞候補の声もあるカズオイシグロは、長崎市に生まれ5歳までを過ごした。石黒が戦後の長崎市内を舞台にして書いた名作。
山に囲まれた陰影の深い、あの町の雰囲気が翻訳越しにもよく伝わってくる。
- 作者: カズオイシグロ,Kazuo Ishiguro,小野寺健
- 出版社/メーカー: 早川書房
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⑧「とんちんかん人形」
「マルチルの刻印」の著者、版画家渡辺千尋が、長崎市内に伝わる、頓珍漢人形の歴史を追ったノンフィクション。蓮如賞受賞作品。渡辺の文章には、ノンフィクション作家やジャーナリストにありがちなレトリックのためのレトリックにおぼれない手触りがある。それはやはり、版画家という実際に肉体を使う芸術家の手がつむぎだす文章だからなのだろうか。65歳の死去はまだまだ作品を書いて欲しかったと思うと、とても残念だ・
⑨「切羽へ」 井上荒野 (未読)
井上光晴の娘、芥川賞作家の井上荒野も、長崎の元炭鉱の町を舞台にした恋愛小説がいくつかある。でも読んだことないっす・・・
⑩ 井上光晴
井上光晴(1926~1992)は、元共産党活動家で、70年代にさせ許に「文学伝道所」を開き、後進の育成に力を注いだ。炭鉱や戦争や差別をテーマにした作品も多い。長崎の代表的な文学者の一人。でも読んだことないのでどれがお勧めか分かりませぬ。誰か教えてください。
ちなみに「ゆきゆきて神軍」の原一男監督の「全身小説家」の主人公。こちらも未見ですが・・・。
長崎市一の繁華街、思案橋近くにかってあった丸山遊郭街を舞台に、郷土史家古賀十二郎と、愛八の人生を描いた小説。映画にもなりましたね
長崎では毎年8月頭に、稲佐山の麓で、「さだまさしコンサート」が、20年以上も開かれている。8月、せっかくの夏休みなのに原爆や戦争のことばかり聞かされる子供のために、何か楽しい思い出をつくってあげたい、と。さだまさしが始めたコンサートに数万人が集う。入場料もなにもかもただ、結構ゴージャスなゲスト(今年は加山勇三、山崎まさよし、らしい)も、そんなさだの熱意に応えて、ただでやってくる。(毎年数千万は私費を投じているらしい)、8月の長崎の風物詩の一つとなっている。
歴史、家族、愛、戦争、人生、そして長崎を歌う、さだまさしは、だから長崎人にとってスターなのだ(たぶん)
さだまさし ベスト 精霊流し 無縁坂 朝刊 縁切寺 追伸 ほおずき 雨やどり 秋桜 コスモス 案山子 檸檬 れもん 線香花火 吸殻の風景 PBB-15
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司馬は生前、各地の郷土史家の下を訪ね、話を聞き、史料を見ながら歴史小説を書いた。てっとりばやく長崎を知るには、やはりはずせない。
⑭
⑮「普賢なりやまず」 鐘ヶ江管一
1990年の噴火で、91年に火砕流で20人近い方がなくなった、島原市長の手記。
実は未読。
⑯さだまさしと並ぶ長崎がうんだスターが福山雅治。なんか長崎のことかいてあると思う。未読・
別冊カドカワ 総力特集 福山雅治 (カドカワムック 311)
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長崎が生んだ国民的脚本家、市川森一が、長崎を舞台に、アメリカ人士官とと没落氏族礼状の蝶々さんの悲恋を小説化した作品。いうまでもなく原作はプッチーニのオペラ、マダム・バタフライである。未読。
⑱ 『死の同心円 長崎被爆医師の記録」 秋月辰一郎
長崎大学医学部出身で、被爆者治療や反核運動に取り組んだ秋月辰一郎の著作。長崎の原爆を考える上で最も重要な史料の一つ。
死の同心円―長崎被爆医師の記録 (長崎文献社名著復刻シリーズ 2)
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⑲ 「花いちもんめ」 谷川史子
個人的に25年来のファンである長崎出身の、漫画家谷川史子さんのデビュー作。長崎の八百屋の息子の高校生の恋愛を描いた表題作ほか、長崎を舞台にした作品がいくつか。
中高6年間男子校の私はね、妹の読むりぼんをこっそり読んで、その満面の笑顔と、つねに走る少女たちのファンになってから、学ランで本屋にこっそり買いにいって、いつも赤面しながらコミックをかってたわけですよ、ほんとにもう・・・(汗)。まさかこんなに長いこと書き続ける漫画家になるとは思わなかった。