人気ブログランキング キリスト教へ にほんブログ村 哲学・思想ブログへ
にほんブログ村 にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

神学部に行きたい奇特な人のための0からの院試対策あるいは神学入門の入門書

神学校や神学部に行きたいという奇特な人がいたとする。しかし、どんな本を読んだらいいのかわからない。そんな人に参考として基本文献をあげみる。想定としては、社会人入学で神学部を目指す人か、学部で1,2年程度神学をかじって、大学院入学を考えている人のための基礎知識の整理ぐらいを対象とする。(プロテスタント神学部)私の場合は、神学部に行こうと思い始めてから半年程度、週末土日にここにマクグラスシリーズは一通り読んだ程度で、社会人入試は合格し、なんと奨学金をいただいた。

 

 (1)キリスト教超入門

まずははじめに無条件にお勧めなのが、マクグラスの「キリスト教総説」、

アリスターマクグラスはイギリス聖公会、オックスフォードの神学者。様々な入門書、概説書を書いており、また元々は分子生物学で博士号を取った後に神学に転じたので、「科学とキリスト教」や、「神は妄想か?」などの著作がある宗教否定派のノーベル賞学者リチャード・ドーキンスとの対論なども出版している。いずれの著作も非常に評判はいい。

現代における、神学入門書には最適というか、日本語だとまずはほとんどマクグラス一択となる。(佐藤優もそう書いていた)

この本では、キリスト教の歴史、教義の基礎、典礼、生活など非常にわかりやすく書いてあり

キリスト教を何も知らない人から、ある程度の知識がある人まで、キリスト教とはなんぞや?ということをきちんと整理できる点で非常にお勧めだと思う。まずはこの一冊。(ただし絶版でアマゾンマーケットプレイスでは2万のプレミア価格。市立図書館レベルならたぶんあると思うので借りるのがお勧めかも)

総説キリスト教―はじめての人のためのキリスト教ガイド

総説キリスト教―はじめての人のためのキリスト教ガイド

 

 

神学とは何ぞや?と思い始めたらこれ、まあ3時間もあれば読み終わる。字でかいし。

とりあえず神学は大きくわけて4つあることを知ろう。

①聖書神学 いうまでもなく聖書。新約(ギリシャ語)、旧約(ヘブライ語)必須、あとラテン語

        そして2000年蓄積された聖書の解釈の蓄積を学ぶ。

②歴史神学 教会史、キリスト教史、日本キリスト教史など。歴史的な面からの研究

    

③組織神学 わかりにくいがシステマティックセオロジー、つまり体系神学。西洋哲学や

        現代神学と交差する。

④実践神学 教会をどう運営するか、信徒や他者とどう接するか、礼拝の形式などなど

         臨床心理、カウンセリング、精神医学、福祉、介護などと交差する。

神学部とは何か (シリーズ神学への船出)

神学部とは何か (シリーズ神学への船出)

 

ついでに この2冊も読むと20世紀を代表する神学者カール・バルトの意義と背景、あとは神学ってのは小兪考え方するのね、ぐらいは少しだけ見えてくる。2冊あわせて8時間ぐらい?

 

 

はじめての宗教論 左巻―ナショナリズムと神学 (NHK出版新書 336)

はじめての宗教論 左巻―ナショナリズムと神学 (NHK出版新書 336)

 

 

(2)神学入門のための入門書

佐藤優はあくまで読書レベルなので、 学問レベルの入門書を読む前に最適なのがこれ。

神学の重要テーマについて、非常に懇切丁寧に書かれている。同じくマクグラスの「キリスト教神学入門」への足慣らしとしては最適。著者が同じため、スムーズに入っていけると思う。

 私が始めて読んだ神学入門書はこれだった。電車の中で読んでいて、神を「信じる」とはただ無条件に妄信することではなく、「信頼」を含むのだ。という文章になぜか泣けるほど感動した。今思うとなぜかもう忘れたが(笑) 

 

神学のよろこび―はじめての人のための「キリスト教神学」ガイド

神学のよろこび―はじめての人のための「キリスト教神学」ガイド

 

 

(3)やっと神学入門

 ほんで、これ。ぶっちゃけ、この本をすべて理解して、頭の中で整理されていれば、日本のプロテスタント神学部ならまあ受かると思う。しかし、歴史、聖書、組織、少し実践と800Pに相当つまっているので、読破するだけでもそう楽ではない。ちなみに、佐藤優は入学前に英語版

読んどけと書いていたが、私にはとても無理だった・・・。

キリスト教神学入門

キリスト教神学入門

 

 (4)プロテスタントの歴史を学ぶ

 

キリスト教神学入門」よりは読みやすいのが、以下の2冊。

プロテスタント思想文化史」は、ルターにはじまり、プロテスタントの歴史を概観し、さらにペンテコステ福音派、もはや白人の宗教ではなく、アジア・アフリカの第三世界の信徒が多い現代のプロテスタント信仰をも一望する。非常に読みやすく、かつ内容は濃い。

プロテスタント思想文化史―16世紀から21世紀まで

プロテスタント思想文化史―16世紀から21世紀まで

 

 

 マクグラスの歴史神学の入門書。こちらも「神学入門」よりは読みやすい。

ちなみに、彼の著作は結構同じ内容を使いまわしているが、そこは復習になってありがたいなぁと思って読もう(笑)

 

キリスト教思想史入門―歴史神学概説

キリスト教思想史入門―歴史神学概説

 

 

(5)キリスト教

キリスト教史についての著作はやわものから専門書までそれなりにあるが、内容の広さ、読みやすさ、面白さで現状最もお勧めなのが、フスト・ゴンザレスの「キリスト教史」 。ゴンザレスはキューバ出身のプロテスタント教会史が専門。この本はとにかく物語のようにすらすらと読めるのに、内容は非常に深い。また特に、上巻の後半の南米のキリスト教について非常に詳しい。世界史においては、コンキスタドールによる南米征服の共犯者として、あるいはせいぜいラスカサスによる原住民保護が語られる程度では、ないだろうか。私もそうだった。しかしこの本で、実は南米では、ドミニコ会イエズス会が世界宣教を巡り争っており、特に多くのイエズス会士が、原住民保護を訴え、ポルトガル商人から抵抗を受け犠牲者を出していたことなど初めて知る事実が多かった。また原住民保護に一生を捧げ、聖人とされた、クラヴェルに関する記述などは圧巻の筆致である。ただし、現代に入ると、ゴンザレスの専門であるエキュメニカル運動にページが多く割かれ、やや薄いのが残念。

 

 

 

キリスト教史 (上巻)

キリスト教史 (上巻)

  • 作者: フスト・ゴンサレス,石田学
  • 出版社/メーカー: 新教出版社
  • 発売日: 2002/06
  • メディア: 単行本
  • 購入: 1人 クリック: 1回
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 

キリスト教史 (下巻)

キリスト教史 (下巻)

  • 作者: フスト・ゴンサレス,石田学,岩橋常久
  • 出版社/メーカー: 新教出版社
  • 発売日: 2003/06
  • メディア: 単行本
  • 購入: 1人 クリック: 1回
  • この商品を含むブログを見る
 

 

ユダヤ人の歴史)

キリスト教を学ぶということはある意味、ユダヤ人のことを学ぶことでもある。なにせイエスも旧約の登場人物たちも全部ユダヤ人なのだから。

そのユダヤ人の旧約から現代のイスラエルまでを、ざっと押さえるのに最適なのは、ポール・ジョンソンの「ユダヤ人の歴史」3冊。とにかく物語のようにすらすら読める。そして、キリスト教成立以来、中世、近世、近代、現代とずっとユダヤ人が迫害されてきて、それがナチスホロコーストにつながることが見えてくる。

ただし、ジョンソンは他の著作もそうだが、研究者ではなく、ジャーナリストなので、根拠や引用を示さず結構乱暴な結論を下す。なので、まあまずは入門のための「物語」として読むべきだと思う。

 

ユダヤ人の歴史 古代・中世篇―選民の誕生と苦難の始まり (徳間文庫)

ユダヤ人の歴史 古代・中世篇―選民の誕生と苦難の始まり (徳間文庫)

 

 

 (20世紀の神学)

おすすめはツァールントの「20世紀のプロテスタント神学」。ツァールントは神学校で学んだが、神学者ではなく、メディアで働いていたらしいので、とにかくわかりやすい。

私もまだ上巻を読んでいるだけなのだけれども、カール・バルト、エミール・ブルンナー、モルトマン、ゴーガルデン、ボンヘッファー、ブルトマン、ティリッヒ、とWW2前後のビッグネームの思想、議論がばっちり抑えられる。

 まぢでおすすめである。

20世紀のプロテスタント神学 上

20世紀のプロテスタント神学 上

 

 

  ただい上記の本は、1960年代に書かれたので、その後がない。そこを知りたかったら

これ。黒人神学、フェミニスト神学、解放の神学、ポストモダン神学、プロセス神学etc1960年以降一気に裾野が広がった現代神学の世界を一望できる。

 

現代神学の最前線(フロント)―「バルト以後」の半世紀を読む

現代神学の最前線(フロント)―「バルト以後」の半世紀を読む

 

 ただし、現代神学を押さえるには必然的に哲学、現代思想をある程度知っていないとさっぱりわからない。ので、とりあえずこれ。まあ現代思想については他にもいい入門書はあると思うので、よくわからないけども。

現代思想入門 グローバル時代の「思想地図」はこうなっている!

現代思想入門 グローバル時代の「思想地図」はこうなっている!

 

 

 (7)聖書学

 新約聖書学の一冊めにはこれがわかりやすい。

新約聖書概説

新約聖書概説

 

 んで、あとはボルンカムぐらいよんどけばいいのではと。

 

新約聖書 (現代神学の焦点 6)

新約聖書 (現代神学の焦点 6)

  • 作者: ギュンター・ボルンカム,佐竹明
  • 出版社/メーカー: 新教出版社
  • 発売日: 1972/08
  • メディア: 単行本
  • クリック: 1回
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 (8)旧約聖書

旧約聖書学はこれ一冊でというのがない。新約よりはるかにテキストの量、歴史の範囲がひろいから。まずはこのあたりで旧約の時代をおさえよう。

聖書時代史―旧約篇 (岩波現代文庫)

聖書時代史―旧約篇 (岩波現代文庫)

 

 

 最近でたこれもあわせて読めばなおよし。

聖書考古学 - 遺跡が語る史実 (中公新書)

聖書考古学 - 遺跡が語る史実 (中公新書)

 

 

 (9)日本キリスト教

 日本キリスト教史ももちろん本はやまほどあるが、院試レベルだとそんなに細かいことはでない。とりあえず3時間で読めるこれあたりで。著者の鈴木範久は立教大学教授で、内村鑑三が専門。非常に読みやすい。

日本キリスト教史物語

日本キリスト教史物語

 

 

 (10)キリスト教辞典

 とりあえず辞典を一冊買っておきたいならこれ。研究者や院生ですら、「岩波キリスト教辞典はけっこう間違いが多い」などとのたまうが、7000円ぐらいで買えて、情報が新しいのはこれしかないので仕方がない。もっててもちろん損はない。

 

岩波キリスト教辞典

岩波キリスト教辞典

 

 

 (まとめ)

と、結構いろいろ挙げたが、まずは上記のマクグラスをしっかり読めば、神学部の編入(3年)、か院試の社会人ならまあなんとかなるのではないかと思う。

 語学は・・・、がんばって勉強してください。

ちなみに責任はとりませんけどね。

神学部にいきたいなどという奇特な人なのだから、信頼できる牧師先生にいろいろ教えてもらってください。

最後に、とにかくなにせ、神学書なんて日本では全くうれないから高い。上記を買ってそろえればたちまち10万は超えると思う。神学部に入れば、とても買えない高い本が図書館でいくらでも借りて読める。それだけでも行く価値はある!かも・・・しれない。

(終)